TV「みんなの健康〜歯の健康」放送概要

第20回 H15.3.16 要介護高齢者の食事の対応
Q. みんなの健康歯の健康、今日は要介護高齢者の食事の対応について青森市歯科医師会の小田嶋 亮先生にお話を伺ってまいります。小田島先生よろしくお願いします
A. よろしくお願いします。
Q. 要介護高齢者の食事をするにあたってまず何をすればいいでしょうか?
A. はい、まず食事をする前に手、口、のどが清潔であるか確かめてください。誤嚥性肺を起こす方は口の中が汚れている方が多いように思われます。口唇や舌の動きが悪かったり、感覚の低下がある場合、口の中の汚れがひどくなってしまうことがよくあります。そして、口の中が汚れていると味覚も変化してしまいますので食べ物がおいしくなくなったり、つい塩分を摂りすぎてしまったりするので注意しましょう。次に食事を摂る部屋の環境に注意します。出来るだけ食事に意識を集中できるように静かで落ち着ける環境にしてください。環境が整いましたら食事の前に準備体操と呼吸訓練をします。
Q. 準備体操といいますと口を動かしたりする嚥下体操のことですか?
A. はい、そうです。嚥下体操をすることにより頚部いわゆる首のあたりとか口唇の緊張がとれて嚥下がいわゆる飲み込みがスムーズに行われます。
Q. それでは呼吸訓練とはどのようなことをするのでしょうか?
A. 次の3つことを行ってほしいと思います。
1 咳き
ゴホンと意識的に強い咳をする練習する。
声門や軟口蓋(上顎の奥の軟らかい組織)の強化、タンや誤嚥物を吐き出す時に役立つ
2 口すぼめ呼吸
20〜30cm先のロウソクの炎を吹き消すように呼吸する
2回吸って口をすぼめて3回吐き出す。
痰の多い人の呼吸訓練に有効です。
食べ物がよく鼻のほうへ逆流してくる方がいらっしゃいますが鼻咽腔いわゆるのどと鼻のところの閉鎖が悪いのですが、口をすぼめて息を吐き出すブローイングという動作は鼻咽腔の閉鎖機能の強化につながります。
3 息こらえ嚥下
私たちはゴックンと食べ物を飲み込む時、息を止めていて飲み込んだ後息を吐く呼吸からはじめています。この嚥下という飲み込みと呼吸の関係を強調したのがこの息こらえ嚥下というものです。息は十分に吸い込んでから息を止めゴクンと飲み込みその後、勢いよく吐き出します。これにより誤嚥の危険性が減少するわけです。
Q. 食事を採るときはどんな姿勢がよろしいでしょうか?
A. はい、いわゆる嚥下、飲み込みが問題ない方いつもの姿勢が一番よいかと思います。しかし、食べ物の飲み込みや送り込みに障害のある方、むせの激しい方などは次のような姿勢をとればよいと思います。
これは30度仰臥位頚部前屈といいます。これは30度で仰向け、そして首を前に倒したような形ですね。というのは食べ物の送り込みに障害がある方では起き上がった姿勢では口からポロポロとこぼれて食べられません。このように仰臥位、いわゆる仰向けをとれば重力を利用できますから取り込み、送り込みがしやすくなるわけです。気管と食道の位置というのは気管が前で食道が後ろになりますから仰向けになりますと気管が上で食道が下になるため誤嚥が起こりにくくなります。また、頚部前屈いわゆる首を前に傾けるというのも誤嚥を防ぐにはとても重要です。
首をまっすぐ伸ばした場合は咽頭いわゆる喉と気管がまっすぐになってしまい誤嚥がしやすくなります。
このように首を曲げることによって角度がつきますから食道の方に食べ物が流れやすく誤嚥がしづらくなります。麻痺のある方は麻痺側の肩に枕などをあてがい、軽度側臥位(麻痺を野無いほうを下にする姿勢)にいわゆるちょっと横向きにして介助を健側の方から食事の介助をしてくれれば食事に意識を集中させることができます。
Q. 嚥下障害のある方にとって食べやすい食べ物とはどういったものでしょうか?
A. 一般に嚥下障害のある方にとって食べやすいものは
1. 密度が均一である(粒々などがない)
2. 適当な粘度がありバラバラになりにくい
3. 口腔や咽頭を通過するときに変形しやすい
4. べたついていない(粘膜にくっつきにくい)

以上の条件を満たす食べ物は嚥下いわゆる飲み込みがしやすく誤嚥しづらい物というわけです。
Q. 具体的にはこのような特徴を持った食べ物にはどんな物がありますか?
A. ゼラチンゼリーやヨーグルト、プリンなどがあげられると思います。濃度が1.6%のゼラチンゼリーがお薦めです。ゼラチン5gに対して水を約300mlで通常のゼラチンゼリーよりやや軟らかめです。ゼラチンゼリーというのは表面が18℃で内部が30℃で溶けますから口の中に入れることによって表面が滑りやすくなってその溶けた表面が周囲の残留物いわゆる食べカスをくっつけて運んでくれるという性質があるんです。ですからそれにより口とかのどをきれいにしてくれるというわけなんです。まちがって誤嚥したとしてもすぐ戻しやすいので非常に嚥下食としてはとても適していると思います。
Q. 食後の口腔ケアも重要だと思うのですけれど何か注意することはありますか?
A. 食後の口腔ケアは器具を口の中に入れて行うものは食後30分ぐらいあけてから行ったほうがよいと思います。食後すぐ行うとのどを刺激して嘔吐を誘発してしまうことがあるからなんです。その間、咽頭ケアいわゆるのどケアをしたらいかがでしょうか?
食べ物が残りやすい箇所として次の2つが挙げられます。
梨状陥凹という所なんですけれどもこの部分の食べ物を除去するには横向き嚥下という方法で行います。まず、右下を向いてゴクン。次に左下を向いてゴクンとするだけです。右下を向くことによって左側の食べ物がまがることによって飛び出します。そしてゴクンとすることによって飲み込めるというわけです。そして反対の方をやれば右の方に残ったものが除去できるというわけです。
もうひとつは咽頭蓋谷という場所です。これは“うなずき嚥下”という方法で除去します。どのようにやるかといいますと、まず首を後ろに傾けししてグッとあごを胸骨にくっつくぐらいひいてゴクンとするだけです。首をうしろに傾けることによって咽頭蓋谷がせばまり中に入っている物が飛び出します。グッとすぐにひくことによって咽頭蓋のフタがしまりかけることによって食べ物が食道の方に流れ込みます。少量の冷たい緑茶を用いて行うとカテキンの殺菌効果が少しは期待でき嚥下しやすくなります。また、食事中むせたりのどに何か詰まったような時にもこれらを行うといいと思います。
Q. 最後に食事指導のポイントを整理しておきたいのですが。
A. はい、要介護高齢者への食事指導のポイントは
1. 食事の前に手、口、のどがきれいであるか確認
2. 食事をとる部屋の環境整備
3. 準備体操と呼吸訓練
4. 食べ慣れた食べやすい姿勢をとる
5. ゆっくり少量ずつ食べる
6. 食事の時間を決める
7. 食後の口腔ケアをする

最後に2時間ぐらいは食べ物が逆流することがありますので完全に横のなる姿勢は避け、リクライニングくらいにしておいてください。